第1回 

ワークシェアリングの可能性

現在、私はNPO蒸暑地域住まいの研究会で、この沖縄の気候に合った省エネ住宅の研究および設計を行っています。
「建設論壇」では、省エネ住宅、ライフスタイルにはじまり、一県民としての視点から沖縄の景観、また一設計士としての視点からの建設業について感じていること等を書かせていただきたいと思っております。
また、私事で恐縮ですが4月に出産予定です。男女という立場比較はあまり好きではありませんが、母としての視点、女性建築士の視点からも感じることを書かせていただきたいと思っております。

男性社会の色が強いこの建設業ですが、仕事の拘束時間も長く「家庭と仕事、どっちが大切なの!」と、奥様に責められた方も少なくないと思います。
そんな中、建設業に携わる女性がわかった時点で「どっちが大切なの?」と問われる立場すらなく産む選択をします。

しかし、いざ望んだ妊娠も同期の男性をよそ目に、仕事から身を引くのは大変心苦しく感じるものです。
現実的に工事現場に立ち会う仕事は、大きなお腹を抱えていくのは恐怖ですし、周りにもご心配をおかけすることになります。
今まで建築士として生きてきた自分から離れて、どの時期に仕事復帰できるか等を考えていくと、男に生まれたかったと思うこともありました。

子育てをしながら働くことを考えて「正社員からパートになる」のは、誇りや自信、給料も約3分の1まで下がるといわれています。
もちろん仕事を生きがいとして生きてきたし、仕事に対する情熱も男性に負けじ魂がありますが、子供を持つということはまた別の視点になります。
母としてできることを考え、仕事の引き継ぎ・残務処理を検討しました。

仕事に対して、我が子のような愛着があり、決して中途半端に終わらせたくないので、これからどうやってこなしていけるかを考えました。
たまたま、現在のところ工事現場の仕事がなかったのは幸いで、基本設計から実施設計に移るお仕事は、辞退させていただきました。
また今後のことも考えて、今は設計の仕事から研究の仕事に重点を置いていくことにしました。
ものづくりから離れていくことは、とても悔しく、でもこれを機会に座学でできること、今できることは何かを問い、前向きに考えることにしました。
建築が社会と自分自身をつなげるものだと感じていた私が、初めて子供を産むということでも社会に対する貢献なのだと思うようになりました。

さて、設計事務所を続けながら子供を育てている女性は、いったいどれくらいいるのでしょうか。
私の周りにも、両親や夫の協力をもらいながら、保育所に子供を預け、働く女性建築士は多くいます。
ただ、やはり妊娠前の状況とは異なり、残業はできなくなり、就業時間も拘束できない、それゆえに給料はもちろん下がり、同期の男性には、とっくに追い越されてしまうのがおおむねの現状だと思います。

子供のころは、なんとなく誰かと結婚して、子供を産んで、育てて、いつか巣立ちまた夫婦の生活を楽しむことが、人生なのだと思っていました。
もちろん今でも幾分も変わらず、その想いはあります。
でも理想と現実には必ずギャップというものがあって建築の仕事が大好きで、一生続けていきたいと思っている私には、ずっと同じペースで続けられる男性がとてもうらやましく感じます。
でも、出産は誰もができることではないということもあり、きっと今後の建築人生を変えるものになると信じています。

建設業だけではなく、実際女性が社会進出することに対して、現実はとても厳しいのです。
場合によっては、仕事を続けるか、産むかの二択を選ばなくてはいけません。
そのジレンマに対して、私はこんな理想を描くようになりました。独立した建築士事務所を持つ女性が、一つの空間でワークシェアするということです。

工事現場にいける人、そばで子供をみながら仕事ができる人、図面をひたすらかける人、保育園に迎えにいかないといけない人、子供が病気で全く仕事に手が付けられない人、それぞれの接点や長所を生かして、うまくワークシェアできないものでしょうか。
もしかしたら、その中で保育士を雇い、保育所に預けなくても身近で子供の様子が確認できる、ということも可能なのではないでしょうか。

ひょっとすると、このようなネットワークの構築も、今後の建設業に影響を及ぼすものかもしれません。

(2013年3月6日掲載)